2013年8月20日火曜日

「いろんなのがいるから驚くなよ」藤子F不二雄異色短編集4のご紹介~パラレル同窓会


「望むものすべては手中におさめた。うたがいなく私は勝利者だ。しかし今になって、フッとなにか・・・満たされぬ思いが・・・」


まず冒頭は、会社社長の男性(主人公)の独白から始まります。


忙しい事の描写の後、旧姓森山咲子という女性が面会に来ます。
彼女はこの社長と仕事上のライバルである男性が取り合っていた女性であり、彼女は社長を捨てて
ライバルの方と結婚しました。
しかし社長は10年かかってライバルを会社からはじき出し、ライバルの方は転職先で停年目前に失職したので拾ってもらえないかと面会に来たのだと。



「この時の顔が本当の私の顔ではないかと密かに思っているのだ」


会社から帰宅して自室で小説を書いていると、
原稿用紙の上にパラレル同窓会のハガキ案内があるのを見つけて「なにかがはじける気配」を感じ取りますが、
気配はそれっきりでその日は何も起こらず、再び会社の場面へ飛びます。


「なにい!!わしがもう帰ってる!?」


会社の社長室でプルートみたいな顔した
ハゲ頭の男が、SMショーが売りのクラブがあるんでメンバーにならないかと提案。
しかし社長は、自分の中にサディスティックな気質があるのは確かだが、
それを律することに誇りを持っているといって断ります。
昨日面会した森山から電話が来て、
身に覚えのないことを自分がしたという電話の内容。
面白くないまま家に帰ると、またしても自分が既に帰って来ていて書斎に向かったというので
そのまま書斎に急ぐと
スーツ姿のもう一人の自分がいて、そいつが自分の代わりに行動していたことを知ります。


「その時が来た!」


パラレル世界の説明をして、自分は偽物などではなく、間違いなくもう一人の社長なのだと説明されますが、理解できない社長。

しかし「その時」がやってきて、一気にすべてを理解します。
今までの人生で枝分かれしたすべての自分が一同に会する自分同窓会の会場の道が目の前に出てきます。

会場への道は一本道で、周りの空間は宇宙。
会場は公園のような造りに、光沢のある床質。
照明と結婚式なんかで見かけるような丸テーブルが置かれた場所です。
軽く50人はいるみたいですね。
社長を案内してきたのは、幹事をやっているので
社長を会場まで運んだあとは登場しません。


「互いに妙によそよそしい。自分は他人の始まりか」


社長で死んだものと来たがらないものを除くすべての自分が集まったらしいのですが
別段することもないので、階段のあるとこに座っていると、
窓際族の自分が絡んで来たり、冒頭の森山咲子と結婚した自分の話があったりしますが、
「なんだかなあ」な表情を浮かべて一人になります。

殺人鬼やテロリストの自分と会った後、作家の自分と話をして、
社長をしていて満たされなかった思いは彼の世界で充足されるに違いないと信じ、
世界の取り替えをして帰ります。

オチは、公園のベンチで寝ていたら警官に起こされて、
自分が自分でない気がする。満たされていないのは胃袋だ。明日の飯をどうしよう。」
というナレーショーンです。

本当にあった話とも、緻密に作られた夢を見ていたとも取れる終わり方です。

覚えていればそのまま小説の形に出来るのでしょうけど、パラレル同窓会から帰るときの音声案内で
全てを忘れて日常の世界へ帰るのですという発言でしたので、覚えちゃいないのでしょうね。


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